私たちの真珠養殖
母貝の選別
10月頃~
良質な真珠は良質な母貝から生まれます。核を入れる母貝と優秀な遺伝子をも持つ細胞貝を選別します。
私たちの漁場である下灘地区では、真珠養殖とともにアコヤ貝の採苗が行われ、隣接した愛南町を含めると全国の真珠母貝養殖の大部分を占めています。
母貝の仕立て(挿核準備)
4月~7月頃
母貝に核を入れるということは、人で言うと体の中にソフトボール大の球を入れられるのと同じで、相当な負担が強いられます。いわば外科手術をするわけですから、人と同じように貝にも麻酔をかけます。
また、挿核時に貝の中に卵が残っていると真珠の色に悪影響を与えるため、水温調整や特殊な機材で排卵を促します。
仕立て技術の良し悪しで今後の貝の生育に大きな影響を及ぼします。
挿核(珠入れ)
4月~7月頃
挿核作業は人が母貝の中に直接触れる最初で最後の工程です。それ故、職人の技術が介入できる最も重要な作業工程です。母貝の中に淡水の2枚貝を丸く削って作った核と、細胞貝の細胞を適切な位置に挿入します。
人と同じで全く同じ母貝はありません。一瞬で貝の個性を把握し、母貝の口の僅かな隙間から、手先の感覚と経験を頼りに挿入場所をメスで切り、素早く、正確に、そして母貝にストレスを与えないよう挿核します。
この作業が真珠の出来に直接影響することは言うまでもありませんが、貝の致死率や作業効率面にも大きく関係します。1人が1日約600個の母貝に挿核します。
養生
4月~7月頃
挿核を終えた真珠貝は時期によって生育環境を変えてあげます。
まずは、手術を終えた真珠貝を養成かごと呼ばれるネットに収容し、比較的浅場の海流が穏やかな真珠筏で休養させます。その間、真珠貝の体の中では、細胞分裂によって核の周りに細胞が取り巻き、真珠袋を形成します。
沖出し
7月頃~
約一か月の間、十分に真珠貝を休養させた後、縦長のネットに移し、沖にある、えさとなるプランクトンが豊富な場所に移動させ、真珠層の形成を促します。
良い漁場の条件は水深があり、水温の急激な変化を受けにくいこと,餌となるプランクトンが豊富な海流があること,雨による山からのミネラルが流れ込みこと等があげられますが、年々絶えず漁場は変化するため、気温や水温、降水量にも影響を受けます。
貝掃除
7月頃~
一度核をいれた真珠貝を再度手術することはできません。
沖出しの後は真珠貝が持つ生命力に託すしか方法はありません。
真珠貝が生活しやすい環境を作ることが漁場管理です。プランクトンが豊富だということは、ほかの生物にとっても活性が活発になり、真珠貝にフジツボや海藻類が付着します。それを定期的に掃除することが貝の健康維持につながります。
定期的にウォッシャー船と呼ばれる作業船で貝掃除を行います。船に搭載された特殊な機材を使い、水圧の力で真珠貝の汚れを除去します。それと同時に真珠貝に適度な刺激を与え、貝の活性を促し、真珠層を厚くさせるという2つの目的があります。汚れが特にひどい場合は、真珠貝を一枚一枚手作業できれいにしていきます。地道な作業が貝の健康状態を維持し、良質な真珠を育みます。
浜上げ(珠はぎ)
翌年12月末~1月上旬
由良半島に雪が舞う頃、約2年の歳月の間、十分に真珠層を巻いた真珠が出来上がります。
水温が16度位まで下がり貝が体の中に栄養を蓄えると、より緻密な真珠層を分泌し始めます。それは「化粧巻き」と呼ばれ、真珠形成において極めて重要な最終工程です。そのタイミングを見極めるのは長年の経験でしか計れない、真珠職人の真髄です。浜上げのタイミングを間違えると、製品化後の真珠のテリに大きな差が出てきます。
日本の四季が生命の神秘を育み、美しい真珠が出来上がります。浜上げした真珠貝は肉片と貝柱に分けられ、真珠が入った肉片は肉砕機に入れられ、真珠を取り出します。肉砕機によって肉片を砕くと真珠が機械の底に落ちてきます。それを研磨機で真珠と真珠をこすり合わせ表面の汚れを落とします。その後、専用の乾燥機で水分をとばすと「生珠」と呼ばれる、加工を一切行っていない真珠が出来上がります。